退職自衛官の就農促進施策について(2025年9月議会一般質問)

農業と自衛隊がそれぞれ抱える課題を組み合わせることで解決策を探れないか、ということについて質問します。

農業の3K、すなわち高齢化、後継者不足、荒廃農地という問題は本県において深刻です。企業等で働いて定年退職した後に就農するというかつて多かったライフコースは定年する年齢が65歳、70歳へと伸びていくにつれて無理が生じ、農業の担い手不足に拍車をかけています。

一方、自衛官の抱える問題として不安定なセカンドキャリアがあります。自衛官の皆様には我が国の安全保障にとってなくてはならない重要な勤めを果たしていただいていますが、多くの方は56歳前後で定年を迎え、年間約5900人の方が定年退職されています。自衛官の再就職は家業があるなど個人の事情で進路を選んでいる方を除けば、ほぼ100%、外郭団体である自衛隊援護協会による紹介・斡旋で決まります。その際、自衛官は他の公務員と異なり誕生日に定年を迎えることから、定年時点で援護協会に求人のでている会社に再就職することになり、運に左右されるセカンドキャリアとなっていることが実態です。希望する業種・職種ではないミスマッチというのは当然に発生し、私としても再就職してもすぐに辞められた自衛官の方を目の当たりにしていますし、再就職後半年以内の離職率は約10%という記事も目にします。ご承知の通り、自衛官の採用については募集定員割れという状況が続いており、定年後のキャリアが描きにくいことも募集活動の障壁の一つになっているものと思います。

そこで、かつての定年就農に限界があるのであれば、50代で退職する自衛官を農業分野で積極的に受け入れていただくよう促すことができないかと考えます。体力十分で機械・乗り物の扱いに長けておられる方もたくさんいらっしゃいます。本年2月の農林水産委員会ではこうしたことを質問、提案させていただいて、委員会におけるご答弁の中では、本県農業大学校の研修において、希望される自衛官を令和2年度から既に受入れされているとのご紹介もいただきました。今年6月には、国から各都道府県農林水産部長宛に「農林水産業における退職予定自衛官の活躍促進について」という文書が出されており、その中に「農業大学校による受入体制整備」の要請がされていますが、本県においては先んじて取り組んでおられていたことに対し大いに評価するところです。

しかしながら、本県農業大学校で実施している研修において令和2年度から令和6年度までの間に現役自衛官を15名受け入れているのですが、残念ながら研修を受けた自衛官の就農実績はゼロとのことです。このことについて、自衛官側の意識の問題なのか、農業サイドが求めていないのか、あるいは仲介などの中間支援に課題があるのか、その背景を探ることにしました。

まず、農業サイドですが、少なくとも本県においては、ほとんどの退職自衛官の再就職を斡旋する援護協会に対し農業法人から求人票が提出されたことはない、ということでした。県におかれては、自衛官募集を所管する地方協力本部に対し農業大学校での研修の紹介や、退職予定自衛官も参加する就職フェアにおいて農業関係のブースも出されていることは承知しております。ただ、こうした有意義にも思える取り組みも、自衛官が定年を迎える誕生日のタイミングで援護協会に求人票が出されていなければマッチングしようがないわけです。

【質問①】

一つ目の質問です。本県の農業法人から援護協会に対し求人票が出されていないことの原因や背景についてどのようにお考えか、また現状の取り組みでは足りないところもあると思いますのでその対応策についてお伺いします。

次に自衛官の農業への意識や中間支援の実態について調べました。全国で年間約5900人の定年退職自衛官の1%未満しか農業に再就職していないというデータがあり、そもそもセカンドキャリアの選択肢に農業を思い描く自衛官はどの程度いらっしゃるのか調査するため、自衛隊にアンケートの打診を行いました。しかし、自衛隊として一議員のアンケートに協力するのは中立性・公平性の観点からお答えするのが難しいとのお返事をいただきました。これについてはごもっともと思いましたので、ヒアリング調査に切り替えることにしました。

まず、農業自衛隊という現役の自衛隊員の有志が本年1月に千葉県多古町を拠点に発足(ほっそく)させた団体をヒアリングさせていただきました。先週末も多古町のサツマイモ農家様のところで援農作業を共にさせていただきました。その中で、自衛隊員と農業の組み合わせは相性が良く十分に発展可能性があるということや、定年退職前には大型特殊免許など農業にも役立つ資格を取得できる仕組みもあることなどお聞きしました。ただ、通常は現役隊員が農業というものに関わりなくキャリアを重ねていくことから、家業が農家でなければ農業をやろうという発想を持てず、セカンドキャリアの選択肢に入ってこないそうです。

そこで、農業自衛隊では、農業技術や情報を提供し、休日には自衛官が農家から栽培基礎を学んだり農機具操作の指導を受けたりできる場づくりをされており、SNSを通じての情報発信や、担い手支援を行う県や町との関係づくりにもご尽力されています。2030年までに年間100人の退職自衛官の就農という目標を掲げられており、まずは多古町に1拠点、ゆくゆくは全国に拠点を設けながら、農作業繁忙期は拠点ごとにずれてくるため桜前線のように北上しながら各拠点を支援する桜花機動隊をつくっていこうという意欲的な夢を語っておられました。

課題としては、私が自衛隊にアンケートをお願いできなかったのと同様に、組織の中にいても現役隊員でいる間は就職をあっせんすることは法律で禁止されているので動きにくいともおっしゃっており、自衛隊という枠組みの中だけで考えても変われないという状況がよく分かり、私としては他の省庁や自治体側から側面的にサポートする必要性を強く感じました。

また、自衛官を定年前に退職し、自ら農業法人を設立されてご活躍されている方にもヒアリングを行いました。農業を始めるには莫大な初期投資もさることながら、農地が借りられない問題にも直面されておられました。当初から栽培を始めた場所の近隣には活用していない農地はたくさんあるものの、また、農地中間管理機構に相談したけれども中々農地は借りられなかったそうです。それでも耕作放棄地解消の活動を地道に続けていたところ、拠点から片道90分の地域の方の目に留まって声がかかり、まとまった農地をようやく借りられるようになったということで、一から農業を始めることは本当に強い気持ちがないとできない、ということを思い知らされました。

これらのヒアリングを通じ、金銭面とコミュニティ面で農業には参入障壁があると感じました。国の新規就農補助金のうち経営開始資金の令和5年度の交付実績は、山口県は東京都に次いで全国で下から2番目の件数であり、県民に農業という選択肢がそもそも頭にない、また、頭にあってもコミュニティが閉じられていて入っていけないという2段階の障壁があるのではないでしょうか。なお、国の新規就農補助金については49歳以下を対象としており、自衛官の定年年齢から外れているわけですが、本県では担い手支援日本一を掲げ独自に50歳以上でも法人に雇用される場合には同様の補助を行われています。しかしながら、50歳以上で独立する場合には国でも県でも支援がなく、対象年齢の引き上げということについては検討の余地があるように思います。

 農地を借りる前段の農家コミュニティへ溶け込むための支援ですが、これは一朝一夕にはできないと思います。農業自衛隊では地域の農家と結びついて、退職前から関係性を作るための場づくりをされていたり、本県農業大学校では現地研修を実施されていたりしますが、もう一段の発想が必要にも思います。ある隊員の方からは、整えられた環境があると飛び込みやすいと言われました。例えば、既に農業大学校では学生が構成員となる一般社団法人やまぐち農大がありますが、退職自衛官の受け皿となる組織を公的にでも第3セクター的にでも作り、耕作放棄地解消の活動や人手不足な農家に対し援農を行う、そうした活動を通じて、農家コミュニティに溶け込む機会を提供してはいかがでしょうか。農業の3K-高齢化、後継者不足、荒廃農地の問題すべてに貢献できる提案です。

【質問2】

2つ目の質問です。山口県内には陸海空あわせて8ヶ所の基地等があり、およそ4,000名の隊員が働いておられるそうで、農業と自衛隊のマッチングは大きなポテンシャルを秘めていると思います。一方で、再就職問題を抱えながらも自衛隊組織だけでは進められないことや先ほどご紹介した農業への参入障壁もある中で、県としてもう一歩踏み出して取り組めることはないかお伺いいたします。

以上

【答弁】

退職自衛官の就農促進施策についてのお尋ねにお答えします。

本県農業を持続的に発展させていくためには、多様な担い手の確保・育成が重要であることから、県では、都市部における就農フェアの開催や、農業大学校における研修内容の充実等に積極的に取り組んできたところです。

こうした中、お示しのとおり、近年の定年延長制度の普及により、これまで以上に定年帰農者の確保が困難となっていることから、就農希望者の掘り起こしに向け、退職自衛官等に対する取組の強化が必要と考えています。

まず、2つの御質問のうち、自衛隊援護協会に求人票が出されていない原因や背景、対応策についてです。

求人票が出されていない原因等については、法人において、地域出身の定年帰農者や、農業大学校の卒業生など即戦力となる若い人材を望む傾向があるためだと考えています。

その対応策としては、退職予定自衛官の就職希望地域等を法人等に情報提供するなど、採用側の求人票の提出を促すとともに、定年退職前に、即戦力となる専門研修が受けられるよう、土日を主体とした新たな研修コースを設置することとしております。

次に、金銭面やコミュニティ面での農業への参入障壁がある中で、県としてもう一歩踏み出して取り組めることはないのかのお尋ねについてです。

金銭面への対応としては、就農開始時の初期コストを低減するため、機械や施設等の導入経費の一部を補助するとともに、安価な中古ハウスの斡旋など、遊休資産の活用を一層、推進します。

なお、御指摘のとおり、50歳以上で就農した場合の給付金については、国制度の対象外となるため、これまでも制度の柔軟な運用を要望してきたところですが、引き続き、国に対して強く要望してまいります。

次に、コミュニティ面への対応として、農業士協会等で構成する「新規就農サポーターズ」や市町とも連携し、引き続き、経営や生活面も含めた、きめ細かな支援を行います。

また、就農希望のある退職自衛官の受け皿づくりについては、現在JA等が運営する農業専門求人サイト「アグポン」を活用し、希望する地域での事前の就農体験を通じて、就農後においても農家の方々との円滑なコミュニケーションが図られるよう支援します。 県としては、市町や関係団体等と緊密に連携し、将来にわたって持続可能な本県農業の実現に向け、退職自衛官をはじめ、意欲ある多様な担い手の確保・育成に一層取り組んでまいります。

パークロード周辺のまちづくりについて(2025年9月議会一般質問)

パークロードはここからほど近い県庁前交差点から旧山口市役所前の早間田交差点までの通りです。パークロード沿いにはコンクリート打ち放しで著名な、各地に文化財も残る坂倉準三氏設計の県立山口博物館をはじめ、県立山口図書館、県立美術館など文化教育施設も立ち並び、山口県の歴史・文化を感じさせる地域となっています。先月、県土木建築部主催でパークロードの清掃活動が実施され、夏真っただ中にもかかわらず、山口市内外から総勢約170名のボランティアが参加されました。私も参加させていただきましたが、はじめからゴミはほとんどなく、アスファルトから生えてきている草引きに終始したところです。それだけ、パークロードは日頃から市民県民に大事にされていることを実感いたしました。

 そんなパークロード沿いには、県立の博物館、図書館、美術館等よりも古い県有建物があります。春日山庁舎とその西隣にある防長先賢堂のことでして、いずれも1928年竣工、築100年に近い建物です。県庁前の好立地に古いけれどもどこか趣があり、隣接する博物館に行くたびに気になっておりまして、実際に春日山庁舎の中を見学させていただく機会を得ました。

現在は倉庫としての活用が主であるようでして、目にするものの中には1980年頃に実施した遺跡調査の出土品や県の文書が保管されてありました。3階は県警音楽隊の練習場所として活用されていますが、小荷物(こにもつ)専用昇降機も機能しておらず、階段を上り下りされて楽器の持ち運びをされています。雨漏りや床、天井などの劣化も見受けられ、耐震性については調査されていないということでした。

春日山庁舎について文献などから調べてみると、元々は東宮殿下行啓記念に県立山口図書館として昭和3年に竣工、ドイツ風セセッション式が採用され、県有施設としては初のRC造ではないかとされ、外壁の仕上げには徳山産御影石を混ぜてあるそうです。昭和48年に現在の県立図書館が完成した後は県の庁舎として使われていましたが、令和3年には庁舎機能も移転し、事務所としての利用はなくなっています。

防長先賢堂も春日山庁舎と同じ設計者で、春日山庁舎が洋風であるのに対し、こちらは和風で校倉造風の鉄筋コンクリート造となっており、同種の近代和風建築には大正10年建築の「明治神宮宝物殿」が挙げられます。神聖さと格式高さを感じさせる外観で、現在は県立博物館の倉庫としてしか使われておらず、屋根からは木が生えているという現状でした。

【質問1】

そこでまずお尋ねしますが、築100年を間もなく迎える春日山庁舎ならびに防長先賢堂の維持管理方針と利活用方策を伺います。

その上で、今の質問は個別の施設についての問いですが、パークロード全体を俯瞰的に見たときのエリア整備についてもう少し聞いていきたいと思います。

まちづくりは基本的には市町の所管とされますが、それでも県の役割はあると思っておりまして、特にさきほどの春日山庁舎のような県有財産が絡むことについては広域的な視点も持って取り組まなければならないと思っています。

県土木建築部でも「持続可能なまちづくり集中支援事業」という事業を令和5年度から実施されており、令和5年度は山口市が採択され、亀山周辺ゾーン・中心商店街ゾーンを対象に両ゾーンをより快適に歩いて回遊できる環境をつくる、としています。亀山周辺ゾーンというのはまさにパークロード周辺です。山口市役所では新本庁舎が本年5月から供用開始され、今後も市民交流棟や立体駐車場の整備を計画されていると同時に、県に対してはパークロード周辺の都市機能の向上を要望され、市施設と県施設との連携強化等の検討に向け意見交換の場を設けて欲しいとしています。

私としても、公的施設が集中する県庁所在地ならではの県有地、市有地を一体的にとらえたまちづくりを進めていくべきであるという問題意識のもと、ご提案を申し上げます。

まず施設の集約化。パークロード周辺には歴史文化施設が点在しておりまして、遺跡の出土品等を展示・公開されている築45年の山口県埋蔵文化財センター、そこから国道9号線を挟んだ向かいには築44年の山口市歴史民俗資料館、また、県立博物館の一画においても考古・歴史展示室があり、主な展示資料として土偶、土器、大型石包丁が紹介されています。それぞれの来館者数については山口県埋蔵文化財センター及び山口市歴史民俗資料館はいずれも年間4~500人程度、県立博物館は45,000人強となっています。各施設連携・協力して展示していますが、徒歩で簡単に行き来できるこれら施設の距離感であれば、観光客も含む利用者の目線に立てば、展示施設を集約した方が来館者数の増加につながり、展示品もより沢山の人の目に触れることになるはずです。その際、スクラップ&ビルドではなく、近年大規模な改修を受け甦った京都市京セラ美術館や山口県においても旧県会議事堂などのように、近代公共建築をリノベーションすることで歴史を紡ぎながら活用するということも考えられ、先ほどの質問でも取りあげた春日山庁舎を活用することもありうるのではないかと思います。

また、山口市民会館の話に変わりますが、山口市民会館も築50年が経過しており市民団体から建て替えの要望があることは承知しております。ただ、市が整備する立体駐車場は約300台の収容台数で計画されていることから、駐車場のキャパシティがネックとなります。ここでご提案したいのは、市民会館の利用客は主に土日であることから、県庁の駐車場とこれから整備の進む山口市役所の立体駐車場の間に新たな会館を立地させ、土日に駐車場を開放することで会館へのアクセスを改善させるとともに南北からの歩行者を創出、そして、休日の行政機関の駐車場の有効活用をしてはいかがかと思います。県有地と市有地を一体的に考えれば県有地も立地の候補となるでしょうし、県民会館ということも見据えていいのではないかと思います。といいますのもかつて、新山口駅周辺には県民会館の構想もあったと聞いておりますが、そちらには山口市がKDDI維新ホールを整備されて高い稼働率で利用されており、市民会館との棲み分けも議論されることになります。参考までに、秋田県では県民会館と秋田市文化会館を集約して、県・市連携文化施設、あきた芸術劇場ミルハスを整備されており、集約化・合築という発想を改めて申し上げておきたいと思います。

【質問2】

そこでお尋ねします。山口市の要望を受けて、県としてパークロード周辺の都市機能向上にむけた情報交換の場を設けていかれることと思いますが、その上で、施設の集約化や利用者目線に立った施設配置、さらには既存施設のリノベーション活用など先ほどご提案申し上げたことも踏まえていただきまして、県庁所在地ならではの県と市一体となったパークロード全体のエリア整備の必要性についてのご見解と、市との協議の場において県として配慮される事項についてお聞きしたいと思います。

【答弁1】

パークロード周辺のまちづくりに関する御質問のうち、春日山庁舎の維持管理方針と利活用方策についてのお尋ねにお答えします。

春日山庁舎は、議員お示しのとおり、昭和3年に県立山口図書館として建設され、その後、県庁舎の事務所に転用し、現在は、埋蔵文化財センターの収蔵庫や文書館の書庫として利用するなど、これまで貴重な県有財産として、適切に維持管理し、有効活用を図ってきたところです。

県としましては、当面は必要な修繕等を行いながら、収蔵庫や書庫等として利用することとしていますが、経年による劣化が進んでいることから、この地域の特性も踏まえつつ、今後のあり方について検討してまいります。

パークロード周辺のまちづくりに関するお尋ねのうち、防長先賢堂の維持管理方針と利活用方策についてお答えします。

防長先賢堂は、春日山庁舎の西隣、県立山口博物館北側の春日山の中腹にあり、昭和3年に竣工し、今年で築97年を迎えます。

建物は平屋で、校倉造り風の珍しい建築様式が用いられ、主要部は木造ではなく鉄筋コンクリート造となっており、専門家から高い評価を受けている、貴重な近代建築物です。

昭和20年頃からは、議員お示しのとおり、博物館の一部として、資料等の保管に利用されていますが、現在のところ、天井の雨漏りや、壁などの著しい損傷も確認されておらず、その外観は今も保たれており、県教委では、今後、一層、その価値に相応しい維持管理に努めることとしています。

また、利活用方策についても、防長先賢堂を多くの方々に知っていただけるよう、博物館が県民向けに実施している教育普及講座において、見学コースに組み込み、建物の文化的価値を紹介するなど、新たな取組を検討したいと考えています。

県教委といたしましては、当時の山口県の歴史や人々の思いを伝える貴重な建物をしっかりと未来へ引き継ぐため、今後、施設の維持管理や、その利活用に鋭意取り組んでまいります。

【答弁2】

パークロード周辺のまちづくりに関する御質問のうち、エリア整備の必要性に係る見解と山口市との協議の場で県として配慮する事項についてのお尋ねにお答えします。

県では、人口減少下にあっても活力を維持・創出し続ける持続可能な地域づくりを推進しており、「持続可能なまちづくり集中支援事業」により、まちづくりの主体である市町が地域とともに目指す「まちの将来像」の実現に向けた取組への支援を行っているところです。

この事業へは、令和5年度に山口市から、山口都市核亀山周辺・中心商店街ゾーンについて、県都の顔としてふさわしいまちの都市空間の形成を図りたいとして応募があり、県では、これを支援対象地区に選定の上、まちづくり計画の策定などの支援を行うこととしました。

計画の策定にあたり、市では、学識経験者や地元商工会議所などで構成するアクション会議を設置し、県の関係課や民間アドバイザーからの助言等を得ながら、まちづくり計画をとりまとめたところです。

 この計画の中には、お示しの亀山周辺ゾーンについて、アクション会議等のメンバーから示された「老朽化した公共施設の集約化やリニューアル」、「市役所広場と沿道の一体的な活用」等の様々なアイデアや取組が掲げられており、今後、実現に向けた検討が行われることとなります。

県としても、パークロードを含む亀山周辺ゾーンは、文化教育施設が一体となった、県都山口のシンボル的文化ゾーンを形成する重要な地域であると認識しており、引き続き、山口市が目指すまちづくりの実現に向け、パークロード全体のエリア整備を支援してまいります。

特定地域づくり事業協同組合について(2025年9月議会一般質問)

特定地域づくり事業協同組合とは、人口急減地域において、繁忙期の異なる地域の仕事を組み合わせて年間の仕事を創出し、組合で雇用した職員、複数の仕事をするという意味でマルチワーカーと呼びますけれども、マルチワーカーを事業者に派遣し、その人件費や事務局運営費に対し国と市町村から半額補助が出る過疎地ならではの有利な仕組みです。

過疎地域では農林畜水産業の1次産業が主である場合が多く、他にも交通、観光、医療や介護、小売りなど生活に欠かせない様々な産業がありますが、人口減少による需要の縮小と人手不足で事業を継続することに窮しています。各事業体単位では人ひとり雇うほどの経営体力はなくて雇用をあきらめているところもあります。

そこで、組合ではマルチワーカーを雇用し、組合に参加する様々な業種の企業に対し繁忙期に応じて派遣する、いわば、地域全体を雇用の場ととらえ、複数の課題にチャレンジする地域経営ともいえる取り組みを担うことになります。特に、本県は中山間地が多く、農業においても大規模生産というよりは少量多品種での生産が多く、農業分野だけで考えても、繁忙期に応じて人材を補助金付きで派遣できる本制度は有効な策といえます。

総務省によりますと、令和2年の制度開始から令和6年10月までに採用されたマルチワーカーは全国で653人、その約6割が地域外からの移住者であり、653人のうち238人が既に退職していますが、退職者の約半数が組合の所在する市町村でそのまま定住されています。さらに、退職して定住した方の半数以上が派遣先の組合員企業に直接雇用されているとのことです。これらのことから、まずは組合が移住者の受け皿となっていること、そして、マルチワーカーに対しては地域や派遣先企業との相性を図るお試し移住期間を提供していると言えるのではないかと思います。その意味で、特定地域づくり事業協同組合は移住促進にも地域活性化にもつながる、地域おこし協力隊に並ぶ素晴らしい制度といえ、普及させていかない手はないと考えます。

全国での認定組合数ですが、令和7年9月時点で127組合あり、おとなり島根県では15組合、鹿児島県では11組合と多い一方、山口県においては現在3組合にとどまっており、うち2組合は本年4月に認定されております。山口県はすごく遅れているというわけではありませんが、地域によって行政の取り組み方が異なるということも聞いており、組合の設立数やその後の組合運営にも影響しているのではないかと思います。

このことをお示しするために、大きく5つの項目に分けて、先進事例を紹介したいと思います。

【カネ】一つ目は資金面での支援です。特定地域づくり事業協同組合において、人件費の半額補助には国と市町村で負担しますけれども、鳥取県や大分県では、市町村の負担額の半分を県が助成することとしています。これは組合を立ち上げた方、また、立ち上げたい方から聞くことでありますが、市町村に相談に行っても中々前向きに動いてくれないことがあるそうで、その背景には市町村も予算を確保しなければならない、負担が増えるということがあるようです。市町村の負担を和らげるとともに、県もバックアップする姿勢を見せることは重要だと思います。

 また、兵庫県では、国のメニューではカバーされない部分への横出し施策として、組合を設立する前の構想検討支援段階に市町と折半して上限100万円を補助する制度を設けているほか、設立後の支援策として、時期によって派遣先が見つからない時などに組合自ら行う独自事業があると経営が安定するわけなのですが、この独自事業の立ち上げに対しても市町と協調して補助する制度を設けています。

 【専門員】2つ目に、特定地域づくりのための専門員を設けての支援です。熊本県では支援員、福島県ではコーディネーター、鹿児島県ではアドバイザーなど名称は異なりますが、予算化して専門員を配置し、説明会などを通じた特定地域づくり事業協同組合の普及啓発や発起人の掘り起こし、関係者調整、組合設立や交付金申請、労働者派遣法に規定される書類の作成支援、会計支援などサポートされています。このうち関係者調整についてですが、とある組合では、設立前に森林組合やシルバー人材センターなど派遣で競合しそうなところに対し説明する責任を課されたという話があり、もちろん説明しに行くと反対意見はなかったそうですが大変ご苦労されたということです。他方で、そうした調整は多くの場合は行政や中間支援機関がされているという話もあり、対応のばらつきを感じさせます。是非、予算化してでも先進県のようなワンストップな支援を求めたいと思います。

【制度運用】3つ目に、都道府県の裁量による制度自体の弾力的運用です。特定地域づくり事業協同組合の制度においては、人口急減地域内の事業所に派遣することを原則としていますが、過疎地域においては農業が主産業である場合が多く、冬の仕事がなくて派遣先が確保できず、経営に窮するケースも多いと聞きます。佐賀県では派遣全体の5割以内であれば、組合が存する市内に限り市街地でも派遣を可とする独自の条件を付して組合の認定をしており、これにより、例えば、武雄市にある組合では、武雄温泉駅前の中心地にある事業者へもマルチワーカーを派遣しておられます。このスキームが山口県にも適用されれば、例えば、湯田温泉の旅館・ホテルにおいては冬でも宿泊需要はあるけれども、人手が足りなくて満室にできないということを聞き及ぶわけですが、そうしたところへも派遣できるようになり、過疎地と中心地でWin-Winの関係を築くことができるわけです。

 【人材確保】4つ目に人材確保支援です。マルチワーカーの確保というのも、過疎地域の1組合にとっては非常に難易度が高いものです。福島県では、特定地域づくり事業協同組合のためのポータルサイト「ふくマル」を公開して各組合を紹介するとともに、マルチワーカー募集のためのオンライン説明会を開催され、組合やマルチワーカーのお話を聞くことができる場を設けられています。移住施策の一環でもあることから、オンラインによる情報発信だけでなく、県のネットワークの活用、例えば東京のアンテナショップやふるさと回帰支援センターの県相談窓口において、県内の組合が人材募集していることを周知されることも有効ではないかと思います。

 【ネットワーク】最後の5つ目に、ネットワーキングの場の提供です。鹿児島県や長崎県などでは、県内の組合が集まる場を設け、組合同士が課題を共有したり、先進組合の話を聞いたりすることで研鑽されており、県にも生の声が伝わるようになっています。

【質問】

以上の先進事例を踏まえまして、山口県でもできることはあると思います。本県ではこの7月に「山口県過疎地域持続的発展方針(案)」を公表し、8月にかけてパブリックコメントを実施されたところです。この案の概要文において、「地域づくりや地域産業の担い手となる多様な人材の確保・育成、定着」について拡充すると明記されてあり、その中で特定地域づくり事業協同組合制度の取組支援についても触れられておりまして、いま申し上げた先進事例のような、一つギアを上げた支援策を期待しているところです。そこでお伺いいたします。県では、特定地域づくり事業協同組合の有効性についてどのように認識され、先ほどご紹介したような他地域の支援策もふまえ、どのように支援を拡充されていくのかお尋ねいたします。

【答弁】

藤生議員の御質問のうち、私からは、特定地域づくり事業協同組合についてのお尋ねにお答えします。

県土の約6割を占める本県の過疎地域は、人口減少や高齢化が急速に進み、農林水産業をはじめ、商工業、サービス業など、地域の様々な業種で人手不足が深刻化しています。

一方で、個々の事業者単位では、年間を通じた仕事がなく、一定の給与水準を担保して常時雇用者を確保することが困難であり、このことが人口流出や廃業の要因、UJIターンの障害ともなっています。

こうした中、令和2年度に創設された特定地域づくり事業協同組合制度は、地域の仕事を組み合わせて年間を通じた仕事を創出し、国と市町村の財政支援によって、派遣職員の安定的な雇用環境と一定の給与水準を確保できる効果的な制度であり、多様な人材の確保・定着にも有効と認識しています。

このため、県では、様々な機会を通じて、地域等に対して制度の活用を働きかけるとともに、組合の設立に向けた支援を行ってきたところです。

具体的には、国や市町、関係団体と連携して説明会等を開催し、先進事例の共有などを行いながら、制度の普及啓発を図っています。

また、組合の設立を目指す団体に対しては、既に事業を開始している組合の責任者や社会保険労務士等の専門家を派遣するとともに、先進地視察に対する支援を行っています。

加えて、設立に際しては、市町や関係団体との連携の下、伴走型の支援を行っており、人材確保の面においても、東京や大阪の移住相談窓口で派遣職員の募集情報の提供などの支援を行っています。

取組の結果、現在、県内3地域で特定地域づくり事業協同組合が設立されており、地域のニーズに応じた事業活動が展開されています。

いずれの組合にも地域外の方が雇用されており、移住者の受け皿にもなっています。

こうした中、実際の運営に当たっては、派遣に関する様々な制約や人材確保、派遣調整など、全国的に同様の課題を抱える傾向があり、県内の組合についても、持続可能な組合運営に向けて、課題を乗り越えていく必要があります。

このため、市町や関係団体と連携して課題の解決に向けた助言を行うとともに、お示しの他の自治体による事例も参考にしながら、関係者間のネットワークづくり等、更なる支援策の必要性について検討してまいります。

また、国に対しては、組合からの意見等を踏まえ、本県も参加する全国協議会を通じ、財政措置の拡充など制度の改善に向けた要望を行っていきます。

私は、今後とも、市町や関係団体と緊密に連携しながら、特定地域づくり事業協同組合の取組を支援し、過疎地域の活性化と多様な人材の確保・定着に取り組んでまいります。